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「退院、おめでとうございます」 その言葉を、ありがたく受け止めるべきか、生意気に突っぱねるべきか、迷った。 退院はめでたいと思うけど、気持ちはちっともめでたくなんかない。 笑顔で拍手を送ってくれる病院の先生方、看護師さんたちに、どんな顔を向けたらいいのかわからない。 気持ちのいい晴天、晴れの日とはまさに今日のことだろうって感じであるが、俺の気持ちはちっとも晴れ晴れしくなかった。 結局、ちっとも上手くない笑みを浮かべて、中途半端に頭を下げて、病院を後にした。 半年以上、お世話になったのに。 人としてどうなんだろうな、とはタクシーの中で反省した。もう、遅いけど。
episode.1 退院
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家に帰ってから一時間。 結局、なにもしていない。 スマホを取り上げては、また手放すを意味もなく繰り返しただけだ。 何も考えていなかったのかな、とここ一週間くらいを振り返ってみる。 会社に連絡しなきゃ、とは思っていたものの漠然と「まあ、家に着いてからでいいか」と考えるのを避けてきた気がする。 考えてみたら、声が出ないんだから電話ができるわけもない。 電話ができないというのは、なかなかに不便だ。 「退院しました、ご迷惑おかけしました」を文字面で書くのは簡単だが、半年間休んでいた復帰のあいさつをメールでというのもなかなか失礼な気がする。 上司には、ちょいちょい、メールで報告を入れていたものの、具体的な話は避けていた。 「いつ退院する」は伝えていたが、「声が出なくなる」は、事前に伝えていなかった。 果たして、それを文字面だけで伝えていいものか、さっきから一時間考えているのだが、答えが出ない。 普通に、メールじゃ失礼だし、怒りを買うだけのような気がする。 かと言って、退院の報告を当日にしないのもなんだかと思う。 今日が退院だと、伝えてはいたからだ。 何もかもが面倒くさすぎる。 俺は、一旦考えるのをやめて、体が望むままにベッドに寝転んだ。 時計は、16時を指している。 油断したら、このまま今日が終わってしまうかもしれない。 が、今はどうでも良かった。
episode.2 声
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