こんな異世界旅もOK?

「異世界転生したーい!」 私は常日頃から、そう叫んで過ごしている健全な高校1年生。 この春から高校生になったばかり。 5月になった今、担任からは毎日のように部活に入れと言われている。

「待ってください、先生。私、異世界転生したいんで部活動をしている暇がないんです!」 「お前なぁ。高校生にもなって何言ってるんだ。いいか、うちの学校は部活動は強制なんだ。今週中にどの部に入るか決めなければ、俺が決めるからな!」 私とは全く意見の合わない担任。 でも仕方ない。今は多様性の時代。色んな人がいて当り前だよね。

そう思って、いつも通り学校中の色んな部屋のドアを開けていたら―― 「うわっ!? これって……!!」 科学準備室のドアを開けた先には、大きなブラックホールのようなものができていた。 私は迷わず飛び込んだ。

ブラックホールの先は、異国情緒あふれる街。 周りの人たちも様々な服を着ている。肌の色も髪の色も目の色も多種多様。それに人間っぽくない人たちも普通に歩いていた。 「やったー! ついに来たんだ! じゃあ、やることは一つだよね!」 私は冒険者ギルドを探した。

冒険者ギルドのドアを開け、受付嬢の前にまで行く。 「いらっしゃいませ。どのようなご用件でしょうか?」 「冒険者登録に来ました!」 「冒険者ですか……?」 「はい! よろしくお願いします!」 「わ、わかりました。職業は何で登録しますか?」 「職業……女子高校生とかはダメですよね……?」 「じょしこう……え?」 受付嬢は混乱している。 この世界には女子高校生という言葉がないみたい。 「職業って一度決めても、また変更できますか?」 「あ、はい。できますよ」 「じゃあとりあえず剣士で。剣は持ってないけど」 「そ、そうですか。かしこまりました」

こうして私は、Fランクの冒険者になることができた。 冒険者ランクはA~Fで、Aの上にはSやSSランクというものも存在しているらしい。 ギルド内にある掲示板を見て、Fランクでも受けられる依頼を探していると、ちょうど薬草採取の張り紙があった。 「よーし、やってみよう!」 私はその張り紙を取って、さっそく薬草の取れる草原に向かったのだった。

「ひっろーい!」 何処までも続く広い草原。 人もいなければ、動物もいない。 この草原は街道からは少し離れているので、人がいないのが普通なのかもしれない。 「よーし、薬草を探すぞー!」 ガサッ

薬草摘みに夢中になっていると、目の前にイノシシのような魔物が現れた。 だけど、当然のことながら私は武器を所持していない。 でもそのイノシシが私に突撃して来ても、焦りはなかった。 なぜなら異世界というのはご都合主義的に作られているものだからだ。

イノシシとの距離が1メートルほどになった時、1人の男性が颯爽と現れ、イノシシとの間に入った。 「はっ!」 ザシュッ イノシシは真っ二つに切られた。

「大丈夫か!?」 男が振り向き、私に声をかけてくる。 (キタッ! イケメン剣士!!!) これこそが、私が異世界に来たかった理由。 私の夢は、異世界で私を溺愛してくれるイケメンと出会って一生安泰な人生を過ごすことなんだから! 「お、おい?」 男は私が怪我をしていないかどうかを確認しながらも、ひざまついて視線の一を合わせてくれる。そんな彼の手を、私は両手で握った。 「始めまして! 私、マヤといいます! 助けて下さりありがとうございました!!」 「あ、あぁ。俺はBランク冒険者のオービッツだ」 「オービッツ! ねぇねぇ、オービッツは彼女とかいるの?」 「はぁ!?」 オービッツは真っ赤になって手を振り払い立ち上がった。 「なんでそんなこと、答えなきゃなんねーんだよ」 「ということは……彼女はいないみたいね」 「おい! 俺だってなぁ、お、女の1人や2人……」 オービッツは、もごもごと言い訳をし始める。 「……もしかして、彼女がいたことがない?」 「っ!! うるせー! これでもモテるんだよ、俺は!!」 私はオービッツをジロジロと見る。 程よい筋肉、整った顔、そして心に響く声。 「うん。決めた! オービッツ、私の王子様になって」 「はい!? ……意味わかんねぇ女を助けちまった……」 オービッツはそう嘆きながらも、ちゃんと私を街まで連れて行ってくれた。 「じゃあな。これからは街の外に出る時は護衛をつけるんだな」 「オービッツがいれば必要なくない?」 「俺は忙しいんだよ!」 憎まれ口を叩きながら、オービッツはどこかに行ってしまった。

一人になった私は冒険者ギルドで採取した薬草を渡し、代金を貰う。 (このお金で、宿屋にでも泊まろうかな)

そう思い、宿屋に行き、指定された部屋の扉を開けると、そこには科学準備室で見たブラックホールがあった。 (ってことは、これで元の世界に戻れるってことね) (異世界転生だと一度死なないとできないけど、私の場合は転生じゃなくて普通に内田摩耶として生きたまま、二つの世界を行き来できるってことか) 「なんて素敵な異世界ちゃん♪」

私はブラックホールの中に入り、学校に戻った。時計を見ると、異世界で過ごしていた時間はノーカウントのようだ。 「よし、決めた! 部室は科学準備室。部活動名はRPG部。この部活なら頑張れそう!」 こうして私は、部活動必須の高校で入りたい部活が見つかったのだった。 END

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