ピュアな王子様
王子様は素直でした。 王子様は良い子でした。 疑うことを知らず、 周りの召使いや臣下のいうことを全部信じていました。 「僕は未来の王様」 「お父様のあとを継いで、この国の王になる」 「僕は立派な王子様」 「学問ができ、剣術にも優れ、」 「見目麗しい、立派な騎士の王子様」 ある日、王子様は大臣が王様に話しているのを聞きました。 「辺境の地で、オーガたちが暴れている」 「国民がおそわれ、畑や森から収穫ができない」 「収穫ができなければ、国は貧乏になる」 「騎士団を派遣して、オーガを討伐しないと」 王様も大臣も、とても深刻そうでした。 柱の影から二人の話を聞いていた王子様は、ならば自分が行こうと思いました。 大げさな騎士団など必要ない。 いつもあれほど僕は褒められているのだから。オーガがどれだけいようと、僕一人でじゅうぶんだ。 そう考えた王子様は、せっかく思い立ったのだからとすぐに気高い騎士らしい装いに身をつつみ、腰にはいつも岩を真っ二つに切っては皆にほめたたえられている聖剣を佩いて鏡の前に立ちました。 鏡には、美しく豪華な騎士の衣装を身にまとった、輝く金髪と青い瞳も宝石のような王子様の姿が映っています。 でも、ただ王子様は鏡で自分の姿を確かめているのではありません。 辺境の地はお城から遠いので、鏡の魔法で一瞬でオーガたちが暴れる場所へ移動しようというのです。 魔法も得意な王子様はご本の通りに呪文を唱えて鏡に魔法陣を描き、オーク退治に征きました。 意気揚々とオーガたちの前に立ち、名前と身分を名乗って聖剣を構えた王子様はーーあっという間に、一匹のオークだけで捕まえられてしまいました。 「どうして?! いつもと同じようにしたのに!」 聖剣を取り上げられ、両手の手首を縛られた王子様は泣きじゃくりながら叫びます。 「ああっ! やめてっ!」 自分たちのねぐらに王子様を連れ帰ったオーガたちは、奪った聖剣を売る前に、切れ味を王子様の騎士の衣装で試しました。 素晴らしかった騎士の衣装は、聖剣にビリビリに切り裂かれ、地について汚れ、とてもみすぼらしくなりました。 肌を刺す空気にふるえ、ますます涙を流す王子様を、オーガたちは面白い見世物だと言って笑います。 今ごろ、お城は大さわぎでしょう。 何しろーー素直さと、美しい外見だけがとりえの、頭の中には褒め言葉しか入っていない王子様が、お供も連れずにいなくなってしまったのですから。 そうです。王子様が信じていたのは、ただのお世辞でした。 剣は、王子様でもふるえるように細く軽く作ってありました。 聖なる剣というのは、そう呼んだほうが王子様が喜ぶからでした。 刀身に刃はついていましたが、王子様では岩を真っ二つになんて、とてもとてもできません。 岩は、お芝居に使う大道具でした。 魔法は、王子様ではなく陰から宮廷魔法使いが使っていました。 素直な王子様が素直な王様になれば、臣下も召使いも楽ができます。 だからみんな、王子様を褒めることしかしませんでした。 疑わなかった王子様。 かわいそうな王子様。 褒め言葉に囲まれていた王子様は、今はオークたちの笑い声に囲まれています。 きれいな青い瞳で泣きはらして、 きれいな金髪をくしゃくしゃに顔に貼りつかせて。 ボロ布になった騎士の衣装でわずかばかり肌を隠して、真っ赤になって。 ああせめて、気づきましょう王子様。 あなたが泣くほど、いやがるほど、性悪なオークたちを喜ばせるとーー。
センシティブな内容を含みます
幸せになったぴーちゃん
幸せになったピーちゃん ここは飼い主が飼えなくなった鳥を持ち込む保護する施設。ここに障害のあるヨウムが持ち込まれた。飼い主は高齢のため病気で入院することになり、もう生きて外には出られないと思っていた。そこでヨウムのピーちゃんを誰かに頼みたかったが、大型の鳥を引き取ってくれる人は居なかった。飼い主は人伝で保護する施設があると聞いてそこに頼むことにした。飼い主は入院する前その施設にピーちゃんを連れていき「この子をよろしく頼みます」と頼んだ。後ろ髪を引かれながら飼い主はその施設を後にした。ピーちゃんは去りゆく飼い主の背中を寂しそうに見送った。 (なんで置いて行くの?帰ってくるよね?待ってるよ)ピーちゃんはいつか迎えに来てくれると信じて施設でずっと待った。しかしいくら待っても飼い主は現れなかった。(いつ…ねぇいつ迎えに来てくれるの?)それからも迎えに来ない飼い主を待ち続けた。(もしかして捨てられちゃったの?)そんな気持ちがピーちゃんの心に影を落とし始めた。(さみしい…悲しい…)施設の人が優しく接してけれても、ピーちゃんは元気がありませんでした。 ある日その施設に1人の男性が色んな鳥を見たくて立ち寄った。「今日はどんな子がいるかな」その男性はある大きなケージの前で足を止めた。「この子、悲しい顔してる」そう言ってじっとその子を見ていた。 男性が見ていたのは、片足の先がないヨウムのピーちゃんだった。 「この子…脚が…」なぜかその悲しげな顔が気になって仕方なかった。 その日は帰ったが、帰ってからもあのヨウムが気になって仕方なかった。「あの子…どんなわけであそこに…」男性は次の日もその施設に行ってみた。まだピーちゃんはそこに居た。男性はそこの責任者にピーちゃんの事を聞いてみた。「そんな訳が…」男性は経緯を聞いて決心をした。 「あの子を迎えたいと思うのですが」男性はピーちゃんを家族に迎えることにした。 ピーちゃんは自分を優しい目で見てくれるこの男性が気になっていた。(あのおじさん、私を優しい目で見てた)少し期待し始めた。男性は色々手続きを経てピーちゃんを家族に迎えた。ピーちゃんは緊張して事の成り行きを見た。 男性はピーちゃんを家に連れていき優しく声をかけた。「今日からここがピーちゃんの家だ、よろしくな」ケージから出すと優しく羽を撫でた。(ああ…温かい手)ピーちゃんは目を閉じてじっと撫でられていた。 ピーちゃんと男性の新しい生活が始まった。毎朝ピーちゃん用に柔らかい止まりやすくした自転車のハンドルに止まらせての散歩が始まった。ピーちゃんも外で嬉しそうに羽ばたいて喜びを全身で現した。 (お父さん、散歩気持ちいいね)そんな声がしそうなほど嬉しそうな顔で止まっていた。男性は自分の子供のようにピーちゃんを可愛がり世話をした。あの寂しそうだった顔のピーちゃんは今は優しい男性に愛されて、嬉しそうな顔で幸せそうだった。(今日もお父さん元気だね、私も嬉しい) ピーちゃんは男性との暖かなぬくもりを感じながら幸せに暮らしました。