幸せになったぴーちゃん
幸せになったピーちゃん ここは飼い主が飼えなくなった鳥を持ち込む保護する施設。ここに障害のあるヨウムが持ち込まれた。飼い主は高齢のため病気で入院することになり、もう生きて外には出られないと思っていた。そこでヨウムのピーちゃんを誰かに頼みたかったが、大型の鳥を引き取ってくれる人は居なかった。飼い主は人伝で保護する施設があると聞いてそこに頼むことにした。飼い主は入院する前その施設にピーちゃんを連れていき「この子をよろしく頼みます」と頼んだ。後ろ髪を引かれながら飼い主はその施設を後にした。ピーちゃんは去りゆく飼い主の背中を寂しそうに見送った。 (なんで置いて行くの?帰ってくるよね?待ってるよ)ピーちゃんはいつか迎えに来てくれると信じて施設でずっと待った。しかしいくら待っても飼い主は現れなかった。(いつ…ねぇいつ迎えに来てくれるの?)それからも迎えに来ない飼い主を待ち続けた。(もしかして捨てられちゃったの?)そんな気持ちがピーちゃんの心に影を落とし始めた。(さみしい…悲しい…)施設の人が優しく接してけれても、ピーちゃんは元気がありませんでした。 ある日その施設に1人の男性が色んな鳥を見たくて立ち寄った。「今日はどんな子がいるかな」その男性はある大きなケージの前で足を止めた。「この子、悲しい顔してる」そう言ってじっとその子を見ていた。 男性が見ていたのは、片足の先がないヨウムのピーちゃんだった。 「この子…脚が…」なぜかその悲しげな顔が気になって仕方なかった。 その日は帰ったが、帰ってからもあのヨウムが気になって仕方なかった。「あの子…どんなわけであそこに…」男性は次の日もその施設に行ってみた。まだピーちゃんはそこに居た。男性はそこの責任者にピーちゃんの事を聞いてみた。「そんな訳が…」男性は経緯を聞いて決心をした。 「あの子を迎えたいと思うのですが」男性はピーちゃんを家族に迎えることにした。 ピーちゃんは自分を優しい目で見てくれるこの男性が気になっていた。(あのおじさん、私を優しい目で見てた)少し期待し始めた。男性は色々手続きを経てピーちゃんを家族に迎えた。ピーちゃんは緊張して事の成り行きを見た。 男性はピーちゃんを家に連れていき優しく声をかけた。「今日からここがピーちゃんの家だ、よろしくな」ケージから出すと優しく羽を撫でた。(ああ…温かい手)ピーちゃんは目を閉じてじっと撫でられていた。 ピーちゃんと男性の新しい生活が始まった。毎朝ピーちゃん用に柔らかい止まりやすくした自転車のハンドルに止まらせての散歩が始まった。ピーちゃんも外で嬉しそうに羽ばたいて喜びを全身で現した。 (お父さん、散歩気持ちいいね)そんな声がしそうなほど嬉しそうな顔で止まっていた。男性は自分の子供のようにピーちゃんを可愛がり世話をした。あの寂しそうだった顔のピーちゃんは今は優しい男性に愛されて、嬉しそうな顔で幸せそうだった。(今日もお父さん元気だね、私も嬉しい) ピーちゃんは男性との暖かなぬくもりを感じながら幸せに暮らしました。
名前も知らない約束
名前も知らない約束
本当に、偶然だった。 普段なら足を運ぶことのない場所。 放課後の図書室は、私には少し静かすぎる。 別に嫌いなわけじゃない。 ただ、本の匂いと、空調の音と、誰も大きな声で話さない空気が重なると、ここは私の居場所じゃないような気がする。 少しかしこまって、背伸びをしているみたいで落ち着かない。 それなのにその日は、なぜか足が止まった。 部活に入っていない私は授業が終わればそのまま帰るのが通常だ。 けれど、昇降口へ向かう途中で、目に入ったのは開けっぱなしになっていた図書室の扉。 どうしてだか、中へ吸い込まれる。 本棚のあいだを歩いて、ちょうど目線の高さにあった適当な一冊を抜き取る。 特別読みたい本があったわけじゃない。 私の選択基準なんて、いつもそんなものだ。 どんな話だろう。 そう思ってページをぱらぱらめくったとき、小さな白い紙切れが落ちた。 拾い上げると、丁寧な字でこう書かれていた。 『6月3日 午後3時 窓際の席で待っています』 今日は5月29日。 そこに書かれていたのは、5日後の日付だった。 誰かのいたずらだろうか、と思った。 でも、いたずらにしては文字がすっきりしている。 急いで書いた感じじゃない。 ちゃんと、誰かに読まれることを考えて書かれた字。 裏返すと、もう一行あった。 『もし見つけたなら、来てください』 ……行くわけない。 そう思ったのに、私はその紙切れを本に挟み直して、貸出カウンターへ持っていった。
6月3日、午後二時五十分。 私は図書室の窓際に座っていた。 自分でもよく分からない。 行くわけないと思っていたのに、朝、家を出る前にあの本を鞄へ入れていた。 授業中も、給食の時間も、ずっとあのメモだけが頭の隅に残っていた。 午後三時。 メモの言うとおりに図書室の奥の席に座る。 誰もいない。 やっぱり、ただのいたずらだったのかもしれない。 そう思おうとしたけれど、なぜかすぐに立ち上がる気にはなれなかった。 窓の外はよく晴れていて青空が眩しく映る。 校庭の端で、風に揺れた木の葉が小さく光っている。 帰ろう。 そう思ったとき、向かいの椅子が少しだけ鳴った。
顔を上げると、男の子が立っていた。 見たこともないし、名前も知らない男の子。 もしかすると違う学年なのかもしれない。 彼は少し迷ってから、私の向かいに腰を下ろす。 「……そこに、メモ、入ってた?」 どうして知っているのだろう。 私は本から紙切れを取り出して、机の上に置いた。 彼はそれを見ると、ほっとしたような、困ったような顔をした。 それから、自分のポケットから取り出したのは私が持っているのと同じ白い紙。 同じ日付。 同じ時間。 同じ筆跡。 ただ、彼の紙には、私の紙とは違う一文があった。 『窓際の席にいる人に声をかけてください』 「俺、図書委員でさ」と彼は言った。 「昨日の当番のとき返却本を棚に戻してたら、これが挟まってて。 変だと思ったけど、なんか、捨てられなくて」 「私も、たまたま借りた本に入ってた」 「じゃあ、たまたま同士だ」 彼がそう言ったので、少しだけ笑ってしまった。
それから私たちは、他愛もない話をした。 クラスのこと、苦手な先生のこと、最近ずっと眠いこと、図書室にはあまり来ないこと。 本当に、たいした話じゃなかった。 けれど不思議なくらい、沈黙が嫌じゃなかった。 話が途切れても、空調の音や、外から聞こえてくる元気な運動部の声がその隙間を埋めてくれた。 西日が差し込んで図書室をオレンジ色に染めたころ、彼が立ち上がった。 「また、来る?」 そう聞かれて、すぐには答えられずにいる私。 でも、机の上の白い紙切れを見ていると、なんとなく、今日はここで終わりじゃないような気がした。 「本を返す日には、たぶん」 そう言うと、彼は少しだけ目じりを下げた。 「じゃあ、また」
彼が図書室を出ていったあと、私は借りていた本を閉じた。 そのとき、ふと違和感を感じる。 閉じた本の間から、先ほどまではなかった白い紙が顔を覗かせていた。 確かにさっきまでは、なかったはずのもの。 また何か書いてあるのだろうか。 そんなことを考えながらそっと引き抜く。 そこには短く、こう書かれていた。 『次会うときは、名前を聞いてください』 私は図書室の扉の方を見た。 彼の姿はもうない。 そういえば、名前も知らないままだった。 私はその紙を本に挟み直して、鞄の中へしまった。 返却日は、来週の水曜日。 それまでの一週間が、少しだけ長く感じる。 名前も知らない男の子にまた会う理由ができたことを、私はたぶん、思っていたより嬉しく感じていたのだ。 図書室を出ると、廊下の窓から差し込む西日がまぶしい。 いつもの帰り道が、ほんの少しだけ違って見えた。